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糖尿病Diabetes mellitus

糖尿病を防ごう!

人生100年時代を迎え、健康で楽しい生活を送るためには、糖尿病を含む生活習慣病の予防が重要です。そこで、熊本県民における課題と、疾病予防に向けたアドバイスをお伝えします。

糖尿病は、血糖値が慢性的に高くなる病気であり、自覚症状がほとんどないため、気づかないうちに進行してしまいます。この病気を放置すると、目や腎臓、神経に障害を引き起こす合併症が発生します。重症化すると、失明や腎不全による人工透析が必要になることがあります。また、動脈硬化症、歯周病、認知症などのリスクも高まることが知られています。

HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)とは

HbA1cは、過去1~2カ月間の血糖値を反映した指標です。これは、採血によって検査が行われ、赤血球のヘモグロビンに結合したブドウ糖の割合を示し、パーセンテージで表されます。正常値は4.6%から5.5%であり、6.5%以上の値が出た場合、糖尿病の可能性が強く疑われます。糖尿病の患者さんでは、個々の目標値は異なりますが、一般的には7%未満を目指すことが推奨されています。※糖尿病治療中の方は、必ずかかりつけ医に自分の目標値を確認してください。

予防のポイント

01

栄養バランスの取れた食事と適度な運動

規則正しく、栄養バランスの良い食事を心がけましょう。また、適度な運動を生活に取り入れることが大切で、特に食後に運動をすることで血糖値の低下が促進されます。

02

日常的な体重管理

特にBMIが25以上の肥満の状態では、糖尿病の発症リスクが高まりますので、日常的に体重を測定し、生活習慣を見直すことが重要です。『体重管理は、糖尿病予防の第一歩』です。*BMI=体重(kg) ÷ 身長(m) ÷ 身長(m)

03

健康診断での早期発見・早期治療

自覚症状が少ないため、健康診断で血糖値やHbA1c(1〜2ヶ月前の血糖値の平均)を確認することが大切です。空腹時の血糖値が126mg/dl以上、またはHbA1cが6.5%以上であれば糖尿病の可能性が考えられるため、医療機関を受診しましょう。

糖尿病にならないための
アドバイス

特定健診と定期的な受診を続けることで、発症予防と重症化の防止を目指しましょう。

熊本大学 名誉教授
菊池郡市医師会立病院
顧問
熊本保健科学大学
特任教授

荒木 栄一

まず、発症予防が非常に重要です。そのためには、バランスの取れた食事と適度な運動に加えて、特定健診を定期的に受けることをおすすめします。特定健診では、血糖値やHbA1cなどが検査されます。健診で異常が発見された場合は、速やかに医療機関を受診し、詳細な検査を受けることが重要です。

早期の糖尿病診断には、糖負荷試験が用いられます。この試験では75グラムのブドウ糖溶液を飲用し、その前後の血糖値の変化を観察します。簡単な検査ですので、正確な診断を受けるようにしてください。もし糖尿病と診断された場合は、定期的な受診を続けることが最も重要です。治療の初期段階では、薬を服用せずに食事療法のみで済むこともあります。しかし、「薬を使っていないということは、病気ではない」と誤解し、治療を途中でやめる事例が見受けられます。これは大きな誤りです。治療を中断することは、重症化のリスクを高めます。

健診の結果、精密検査が必要とされているにもかかわらず受けないことや、治療を途中でやめてしまうことは、最も避けるべき事態です。糖尿病は、治療を続け良好な血糖コントロールを維持することで合併症を予防し、健康寿命を全うすることが可能です。ぜひ、検査と必要な治療を続けていきましょう。